帯の柄の入り方

帯は、柄の入り方によって3種類に分けられます。

【全通柄】
全体に柄が入っています。一般的には繰り返し柄です。
帯のどこが正面になっても、お太鼓になっても構わないので比較的初心者向けですが、全体的に厚みが出やすく重いという難点があります。

【六通柄】
全通柄を簡略化したもので、胴に巻かれて見えなくなる部分を無地の布に替えた帯です。
全通柄よりも安価にでき、締めやすく軽くなるため、現在の主流です。
六通の「六」とは、全体の6割に柄が入っているという意味です。
それほど多くは使われていませんが、全体の4割に柄が入る四通帯というものもあります。

【お太鼓柄】
ポイント柄とも呼ばれます。
お太鼓になる部分にだけ柄が入っている帯で、多くは、それに対応して胴の前の部分(お腹部分)にも柄が入っています。こちらの柄のことは「腹紋」(はらもん)と言います。
絵画的な表現ができるため人気がありますが、締めたときに綺麗に柄を出せるようになるには慣れが必要です。

「着物に紋を入れる」と言ったときの「紋」とは、家紋を指します。
家ごとに代々伝えていくものですが、庶民が家紋を使うようになったのは、江戸時代からだとされています。

家紋のしきたりは地域によって異なり、特に女性が結婚した後、嫁ぎ先の紋を使うか、実家の紋を使うかについては、その家や土地柄によってまちまちです。
そのため、着物に紋を入れる際には、親や義理の親の判断に従います。

日本の中でも、特に関西地方で多く見られるのが「女紋」という習慣です。
これは、母から娘へと継いでいく紋のことですが、他の地域では単純に女性の実家の紋を女紋と言うこともあります。

着物には家紋を入れるものと言っても、貸衣装ではそういうわけにいきません。
また、外国出身者はそもそも家紋を持っていませんし、長い間に家紋がわからなくなってしまったという人もいます。

そのような場合、通紋(とおりもん)と呼ばれる汎用的な紋を使ったり、新しくデザインした紋を使ったりします。
この、通紋や新しい紋を女紋と呼ぶこともあります。

四君子

着物や帯には「四君子柄」という物があり、おめでたい柄として喜ばれます。
この四君子柄とは、蘭、竹、菊、梅の4種類の植物を組み合わせた柄を指します。

これらはもともと中国で尊ばれた植物で、気品の高い美しさが君子(人格に優れ、学識が高い人)のようであるとされ、これら四つを並べて四君子と呼んでいます。
また、蘭は春、竹は夏、菊は秋、梅は冬を象徴します。
着物の世界だけではなく、絵画の世界でもこれらを1セットとして描くことは多くあり、特に水墨画では基本的な練習用の題材としても使われている組み合わせです。

蘭、竹、菊、梅は、単独でもよく着物の柄に使われますが、この場合は、それぞれの季節に合った時期に着るのが原則です。
ところが、4種類が同時に描かれていると、通年着ることができる柄になります。

同じような考え方で、桜と菊、蝶と紅葉のように、あえて季節が違う物を組み合わせて描き、通年着用できるようにした柄もあります。

茶道と着物

茶道と着物は、切っても切れない関係です。
茶道の作法の中には、たとえば、袱紗を懐から取り出して帯に付けるというように、着物を着ていることが前提となっている動きがあります。
そのため、茶道の指導者には、着物に詳しい方が大勢います。

一方、着物が日常着でなくなった現代、茶道を習うために着物を着なくてはいけないというのは現実的ではありません。
そのため、洋服でも茶道を始められるように、色々な工夫がされています。
代表的な物が「稽古着」と呼ばれるベストのような物で、ちょうど着物の上半身から袖を取り外したような形をしています。

茶道を始めるために着物を準備しようと考えている方は、先生ごとに方針が異なりますので、自己判断はせずに先生に相談してください。

なお、客として茶会に呼ばれた場合は、必ずしも着物を着る必要はありません。
どのような服装のお客様も平等にもてなすことが、茶道の精神です。
もちろん、場に合った着物を着て行けば大変に喜ばれますから、可能であれば着ることをお勧めします。

着物用の履物

着物を着たときに履く履物には、大きく分けて草履と下駄があります。
草履と下駄の違いを定義することは意外に難しいのですが、概ね、木製は下駄、それ以外は草履と考えればよいように思われます。
下駄は普段着用で、草履は礼装から普段着用とされています。
草履はさらに礼装用と普段着用に分かれますが、踵が高い物が礼装用、低い物が普段着用です。
草履の中で、台(足を乗せる部分)がイグサや竹皮などで仕上げられている物は夏用です。

ただし、改まった式典以外では、それほどこだわらなくても大丈夫です。
浴衣の場合、洋装用のサンダルを履く人もいますが、似合っていれば問題ありません。

草履も下駄も、小さめの物を履いて踵を少しはみ出させるのが格好いいとされています。
小さめでも歩きにくくはなく、むしろ大きすぎると歩きにくいので、選ぶときには注意してください。

伝統的な着物用の履物は、左右同じ形をしているのが特徴です。
定期的に左右を入れ替えると、踵の一方だけがすり減るということがなくなり、より長く履けます。

着付け小物の役割

着付け小物とは、着物を着るときに使用する小物のうち、外から見えない補助的な道具を指します。
着付けをする人の流儀によって様々な道具が使われますが、基本的には腰紐、伊達締め、帯板、帯枕があればよく、その他の特別な道具は、基本の道具の改良版です。

腰紐は、着物を体に固定するための紐です。
1本は文字通り腰の辺りで締めますが、胸元でも1本締めて、衿が動かないようにします。
胸元で締める紐は胸紐とも呼ばれますが、物自体は腰紐と同じです。
腰紐は着物だけですが、胸紐は襦袢と着物の両方で使い、さらに、帯を結ぶときに仮紐としても使うことがあるので、合計で約4本の腰紐が必要になります。

伊達締めは、胸紐を締めた上に締める物で、その役割は衿周りが崩れないようにすることと、胸紐の結び目やだぶついた布などを覆い隠すことです。
襦袢と着物の両方で使うので、合計2枚必要です。

帯板は、帯の前部分に皺が寄るのを防ぐために使います。
帯枕は、お太鼓の土台を作って、帯が下がるのを防ぐ物で、半幅帯には使いません。

着物用の肌着

着物の下には襦袢を着ますが、そのさらに下に、肌襦袢という上半身用の肌着と、腰巻きという下半身用の肌着を着けます。
これは、襦袢に汚れが付くのを防ぐのと、防寒が目的です。
そのため、暑い日に洗える素材の襦袢を着る場合は肌着を省略しても構いませんが、着物に汗染みが出る可能性を考えると、できるだけ肌着で汗を吸い取ってしまった方が安心です。

肌襦袢も腰巻きも、外からは決して見えない下着なので、何を使っても構いません。
上下に分かれているタイプは慣れないと着づらいので、一体化したスリップ型の肌着も出回っています。
洋服用の肌着を着ても構いませんが、脇の汗を吸い取ってくれる形状の物が良いでしょう。
また、衣紋を抜く分、背中から見えるおそれがあることに注意して、できるだけ衿ぐりが大きいものを選んでください。

伝統的な肌着を使う場合は、まず腰巻きを着けて、肌襦袢を着ます。
肌襦袢には通常、前を留めるための紐やボタン類はありません。
前を合わせたら、そのまま上に襦袢を着て、襦袢の紐で押さえます。

「衣紋が詰まった」ときの直し方

着物を着るときには「衣紋を抜く」のですが、きちんと抜けていないと「衣紋が詰まっている」と言われます。

着付けのときには十分に衣紋が抜けていても、着物の重みなどで次第に衣紋が首の方にずれてきて、衣紋が詰まることがあります。
こうなると、余った衿周りが横や前でだぶついて、全体的に形が崩れてしまいます。

衣紋が詰まることを防ぐには、襦袢を着る段階で注意をします。
着物を着た状態をイメージして、襦袢の衿が正しく抜ける位置まで襦袢の後ろを引っ張ってから、伊達締めで押さえます。
また、衣紋抜きと呼ばれる細長い布を衿の後ろ部分に縫い付けておくと便利です。

それでも衣紋が詰まってしまった場合、着物だけを引っ張っても綺麗に直らず、またすぐに詰まってきてしまうと思います。
トイレなど人目のない所に行き、思い切って着物の裾を上げ、襦袢の後ろを引っ張ってみてください。
衣紋抜きを付けているなら、衣紋抜きを引っ張れば大丈夫です。
襦袢の衿が整えば、着物の衿もそれに沿って整います。
最後に、半衿の出具合を整えましょう。

衣紋(えもん)

着物を着るときに「衣紋を抜く」とよく言われますが、この衣紋とは着物の衿周りのことを言い、特に衿の後ろ側を指します。
「衣紋を合わせる」という言い回しもあり、この場合は前の部分を指します。

なぜ衣紋を抜くのかは定かでありませんが、髪を結って後ろに膨らませることが流行した時代に、衿が汚れないよう、髪に触れない位置まで衿を後ろに下げたのが始まりだという説があります。
現在では、着物姿を綺麗に見せるテクニックの一つになっています。

どのくらい衣紋を抜くかは着物によって異なり、格が高い着物ほど多く抜くのが原則です。
そのため、花嫁衣装では、背中が見えてしまうほど抜きます。

通常着る着物では、こぶし一個分が目安とされています。
最もカジュアルな浴衣の場合は、指二本分くらいです。
また、若い人は少なめに、年配の人は多めに抜くのが良いとされています。
しかし、抜き加減には流行もあり、結局のところは好みの問題です。
慣れないうちは抜き加減が少なくなりがちなので、少し多めに抜いたつもりでちょうどよいでしょう。

半衿

半衿は、着物の衿から少しはみ出して見える襦袢の衿のことです。
ただし、襦袢自体の衿ではなく、襦袢の衿に縫い付けてある布のことを指します。

なぜ襦袢の衿に半衿を縫い付けるかと言うと、衣服は衿が最も汚れるためです。
衿を別にしておくことで、衿だけを外して洗濯できるようにした物が半衿です。

現在では、装飾の意味が強くなり、とても洗濯できそうにない刺繍入りの半衿なども出回っています。

礼装には主に白を使いますが、必ずしも白無地である必要はなく、白地に淡い色の糸で刺繍をしたものや、ビーズが縫い付けられた物もよく使われます。
特に振袖の場合は、派手な色に豪華な刺繍が入った半衿が普通に使われます。

逆に、カジュアルな着物では色柄の入った半衿を使うことが多いのですが、白無地の半衿でも全く問題ありません。

礼装では半衿を多く見せ、カジュアルではあまり見せないのが慣習ですが、色柄入りの半衿をカジュアルに合わせた場合は、多めに見せて半衿を目立たせるのが良いとされています。