「沓」は「靴」と同じ意味ですが、特に束帯などを着る際に履く物を「沓」と表記することが多いようです。
最も正式な沓は「靴の沓」(かのくつ)と呼ばれる履物で、黒漆を塗って仕上げた革製の靴です。
足首の部分は豪華な絹織物で飾られており、履くときには、この布部分の中に袴を入れていました。
この時代には靴下を履く習慣はありませんでしたが、靴の沓を履く時にだけ、靴擦れを防ぐために「しとうず」と呼ばれる靴下の一種を履いていました。
「しとうず」は、現在の足袋の原型と考えられています。
靴の沓は正装用ですが、これに対する日常用の履物は「浅沓」(あさぐつ)です。
浅沓のほとんどは桐を彫って黒漆を塗った木靴でした。
内側にクッションのような物を付け、布張りにしているため、木製の割りには履きやすかったようで、桐製なので軽いのも特徴です。
現在でも、神官が屋外で宗教的な行事を執り行う際には、浅沓を履きます。
しかし、長時間履くのには向かず、雨にも弱いので、見た目を模したゴム靴が使われることもあるようです。