紫根染めは紫色の染め物で、ムラサキという草の根を使って染めます。
代表的な産地は岩手県の南部地方です。
この地方に紫根染めが伝わったのは鎌倉時代より前と言われていて、江戸時代には盛んに生産されていたそうですが、明治時代になると化学染料に押されて衰退しました。
その後、紫根染めの復興を目指し、岩手県が主導して研究が進められ、東京でも知られるようになると、再び岩手県の伝統工芸品として人気を集めるようになりました。
岩手県出身の作家である宮沢賢治は、当時の状況を元にして「紫紺染について」という作品を残しています。
紫根の色素は時間が経つと損なわれてしまうため、染色は手早く行う必要があります。
また、濃い紫色を出すためには、何度も重ねて染める必要があります。
紫色に染めることはとても難しく手間がかかるため、日本では古くから貴重な色とされており、紫色を身に付けていることが身分の高さを示すような時代もありました。
紫根染めには、後染めも先染めもありますが、後染めの物の多くは絞り染めです。