着物に紋を入れる時には、通常、着物地に白で紋を描いたような仕上がりにします。
しかし、色の付いた地に白で描いてもきれいな白色にならないため、染めた色をいったん抜いて白に戻し、輪郭を描いてから、抜き過ぎた白を地と同じ色の染料で埋めて仕上げるという手順が取られます。
この方法で描かれた紋を「染め抜き紋」と言います。
染め抜き紋は、さらに、白で家紋を細かく描いた「日向紋」、輪郭線だけを描いた「陰紋」、陰紋よりも太い白線で輪郭を描いた「中陰紋」に分けられ、着物を着る場面に応じて使い分けられています。
一般的な礼装に使われるのは、最も正式とされる「染め抜き日向紋」です。
染め抜き紋以外に、白以外の色で紋を染めた物もあり、これは「染め紋」と呼ばれます。
また、紋を刺繍で入れることもあり、これは「繍紋」(ぬいもん)と呼ばれます。
染め紋や繍紋は正式な紋ではなく、ワンポイントの装飾として扱われます。
特に繍紋は、きれいな多色使いも可能になるので、家紋の代わりに凝った模様を入れることも多いようです。