夏の着物には、絽と紗の2種類があります。
どちらも「透け感のある生地」なのですが、よく見ると、絽の方は等間隔に線が入っているように見えます。
紗には、そのような線はなく、全体が均等に透けているように見えます。
絽に入っている線は、隙間が空いている部分とそうでない部分が交互に現れるためにできるのですが、隙間が空いている部分のことを「絽目」と言います。
横方向に絽目が入っていると横絽、縦方向に入っていると堅絽(たてろ)と呼びます。
歴史的には紗の方が古く、織り方も簡単ですが、隙間が多すぎて柄をきれいに入れるのが難しいという問題がありました。
そこで、江戸時代の頃に改良版として絽が生まれたとされています。
絽の方が色柄がきれいに出て、むやみに透けないため、現在の夏着物の多くは絽です。
しかし、紗の方が涼しく、独特の優しい風合いもあることから愛好者も少なくありません。
また、紗は「紗袷」と言って2枚重ねにして仕立てることもあります。
あまり一般的な物ではないので、紗袷を着ている人はかなりの着物好きであることがうかがえます。