変わり結び

浴衣の帯結びで「変わり結び」という言葉がよく使われますが、変わり結びとは、他に呼び名が付いていない結び方の総称です。
変わり結びという特定の結び方があるわけではありません。

半幅帯はカジュアルな帯でルールに従う必要がないため、変わり結びがよく誕生します。
一方で、礼装用の袋帯でも変わり結びはできますし、実際によく行われています。
特に振袖には、袋帯を変わり結びにして合わせると華やかになります。
名古屋帯は長さが比較的短いため、お太鼓か角出しにする以外の結び方は難しく、変わり結びにする例はあまり聞きません。

変わり結びはその場のアドリブのようなもので、それぞれには名前がないのが普通です。
そのため、他の人が結んでいたのを見て同じ結び方をしてもらおうとしても、伝わらないことがよくあります。
袋帯を結んでもらう時に、雑誌などで見たのと同じ結び方にしてほしいという場合は、切り抜きを持っていった方が無難です。

半幅帯の変わり結びなら、自分で色々と考えてみるのも楽しいものです。

角出し

現在、角出しと言えば紬や小紋に合わせるカジュアルな名古屋帯の結び方を指し、粋な結び方として人気があります。

実は、角出しは、現在主流のお太鼓結びよりも古くからあった結び方です。
ただ、昔の角出しは現在の物とは少し結び方が違っていました。
共通するのは、お太鼓に相当する部分の両端から帯の先が出る形であることで、出ている部分を「角」と表現して「角出し」と呼んでいます。

現在は帯締めと帯揚げを使って角出しを作りますが、昔は帯を完全には結びきらず、たれの先を帯の下に残したまま、中途半端に引き抜いて輪になった状態の帯を下げていました。
この結び方なら、帯締めも帯枕も必要ありませんが、現在の名古屋帯では短すぎ、袋帯では長すぎます。
お太鼓結び用に名古屋帯と袋帯が普及すると、これらの帯でできるように角出しも変化しました。
その結果、昔の角出しに適した長さの帯は廃れてしまったようです。

角出しに似た帯結びで銀座結びという結び方もありますが、「名古屋帯の角出し」と「銀座結び」の違いは明確ではなく、人によって意見が異なっているのが現状です。

関東巻きと関西巻き

同じ日本の中でも、着物の着方が地方によって違っていることがあります。
大きな違いがある例として、帯を右から左に巻くか、左から右に巻くかという違いがあります。

自分の体の前を帯が右から左に向かうようにして巻くのを関東巻きと言い、その逆が関西巻きです。
その名の通り、日本の東の方では関東巻き、西の方では関西巻きが主流です。

手先と呼ばれる部分が左右どちらに出るかの違いがある以外、どちらの巻き方でも仕上がりは同じです。
ただ、帯のお腹側の柄(腹紋)が、関東巻きと関西巻きで違う側が出ることに注意が必要です。
自分で着る場合は、自分がやりやすい方で気に入った柄が出る帯を選ばないと後悔します。
人に着せてもらう場合は、どちらを出したいか先に確認しておいて、そちらが出るようにはっきりと依頼しましょう。

両方の巻き方ができると、二通りの腹紋が入っている帯の両面を使い分けたり、一方の面が汚れた時に反対側を使えたりして便利です。

ガロンテープ

洋服も同じですが、着物も裾と袖口が最初に傷みます。
そのために、袷の着物では八掛を外に少し出し、傷んだ場合は八掛だけを交換すればよいようにします。

しかし、現実には八掛を取り替えるのにも手間がかかります。
また、単衣の場合は八掛がないので表地がすぐに傷んでしまいます。

日常着として着物が着られていた時代には、八掛よりもさらに交換が簡単になるよう、裾と袖口に保護用のテープを縫い付けていました。
これがガロンテープです。
幅広の布テープの片側に飾りが付いたような物で、現在でも洋服や雑貨の飾りテープとして売られています。
このテープを八掛よりさらに外に少しだけ出るように、片側に付いている飾りが覗くようにして縫い付けます。

正装や礼装には付けませんが、今も普段から着物を着る人は付けているそうです。
中には、保護用としてだけではなく飾りとして付けている人もいるようです。
また、リサイクル着物の中には、以前の持ち主が付けたテープが残っている物もあります。

リメイク用に布を準備する方法

着物からのリメイクを行う場合、ほどいて広い布として使う場合と、欲しい部分を直接切り取って使う場合があります。
木綿やポリエステルの着物や、先染めの着物はほどいてから裁ち目をかがって洗うとさっぱりしますが、すべてが洗えるわけではないので、小さな部分で試してからにしてください。
掛衿部分が使いやすいと思います。

後染めの正絹の着物は、色が落ちるので絶対に水洗いはしないでください。
汗臭いなど、どうしても洗いたい場合は、着物の状態のまま洗い張りに出すと良いです。

着物をほどく場合、決まった手順はないので、ほどきやすそうな所からほどけば大丈夫です。
縫い始めや縫い終わりの部分が頑丈に留まっていることがあるので、ここを無理に引っ張らないようにだけ注意してください。
ほどきにくい部分は慎重に糸を切ります。

きれいな部分だけを切り出してパッチワークなどに使いたい場合は、直接切ってしまうこともできます。
一旦ほどいた方が扱いやすいのですが、傷みがひどく使える部分が少ない場合は、直接切った方が簡単だと思います。

着物から何にリメイクできるか

着物の生地から様々な物を作ることができますが、着物特有の問題として「洗濯ができない」という問題があります。
(木綿、ポリエステルの着物は除きます)
先染めの着物であれば中性洗剤で手洗いすることもできますが、後染めの着物は、布の上に絵を描いているような物なので、水に浸すと確実に色落ちします。
また、ちりめんなどシボがある布は水に浸けると縮んでしまいます。
物によりますが、半分くらいに縮んだ例もあるそうです。

そのため、基本的には洗濯をしないで使うバッグやインテリア雑貨を作ることが多いようです。
洋服にする場合は、仕立てる前に洗い張りをしてもらい、リメイク後はドライクリーニングに出すようにします。

日本で古くから作られていたリメイク品の定番としては、布団や座布団があります。
布団は水洗いしないので着物からリメイクするのに適していますし、作るのも簡単です。
アロハシャツも定番ですが、水洗いできないため、普段着ではなく特別な時に着る服として扱われることが多いようです。
最近は、ドレスへのリメイクもよく行われます。

プロが行う着物の加工

一般の人が着物を手直ししようとしても限界があります。
一方、着物のプロは、そのままでは着用できない着物でも様々な方法で直してくれます。
どのような加工を依頼できるか、いくつかの例を紹介しましょう。

着丈が足りなくて足が出てしまう着物は、帯で隠れる部分に別布を足して伸ばします。
逆に、着丈が長すぎておはしょりが多くなりすぎる着物は、裾を切って短くします。

裄の長さは、袖付けをほどいて袖幅を調整してから付け直します。
身頃の幅(身幅)は、脇をほどいて縫い直すことで調整します。

日に当たるなどして色があせた着物は染め直します。
大きなシミができてシミ抜きをしても取れない場合は、染め直すこともありますが、シミの上から絵を描いて隠してしまうこともあります。
条件によっては、目立つ場所に汚れが付いた場合、目立たない場所の生地と入れ替えてしまうこともあります。

それなりに費用と時間はかかりますが、特に思い入れのある着物や貴重な素材の着物の場合は、このように直すことも検討すると良いでしょう。

大柄な人の着物

着物を作る反物の幅は決まっていて、長さも大体決まっています。
最近は日本人の体格も良くなってきて、それに対応するために反物のサイズも少し大きくなってきてはいますが、それでも特に大柄な人だと足りなくなることがあります。

長さが足りない場合に対応する方法は比較的簡単で、別の反物から足りない分(通常は片袖分)を取ります。
幅が足りない場合は、袖の身頃側に布を足して伸ばします。
身頃部分は元々縫い代をたくさん取っているので、縫い代を減らせば十分な幅が出せるはずですが、それでも足りない場合は身頃の脇側に布を足します。

このように幅を出すことを「割を入れる」と言います。
昔も相撲取り(力士)は大柄だったので、割を入れた着物を着ることは普通でした。
また、力士は大柄な方が基本的に強いので、まだ地位が低い力士も将来大きくなることを願い、必要がなくても割を入れて着物を仕立てることがあったそうです。
この習慣から、割を入れた着物は現在でも「将来大きくなる」という願いを込めた縁起の良い物として扱われています。

葛布(くずふ)

葛布は、ツル性植物である葛のツルの繊維から作られた布です。
日本最古の布の一つと言われており、古墳時代の遺跡から葛布が出土しています。
奈良時代や平安時代の資料にも葛布に関する記述があり、この頃には広い範囲で使われていたと考えられます。

現在の主な産地は静岡県の掛川市周辺ですが、江戸時代の資料にも、葛布が掛川の名産であるという記述が見られます。
掛川葛布の特徴は、経糸には木綿糸など葛以外を使い、緯糸に撚りをかけない葛の糸を使っている点にあります。
これに対して、たとえば九州地方では経糸と緯糸の両方に撚りをかけた葛が使われていたと言われています。

葛布は光沢があり、江戸時代までは公家や武士の衣類として広く使われていましたが、明治時代以降このような需要がなくなり、代わりに壁紙として生産されるようになりました。
葛布の壁紙は日本の輸出品として大切にされていましたが、やがて韓国が葛布壁紙を生産するようになり、日本の葛布生産量は激減します。

現在は、帯、草履、バッグなどの素材として使われています。

科布(しなふ、しなぬの)

科布とは、シナノキという木の樹皮から繊維を取り、この繊維で織った織物です。
いつ頃から作られていたかははっきりとしませんが、おそらく日本最古の織物の一つであろうと推定されています。
平安時代には、税として納められていたという記録があります。

丈夫で水濡れに強いという特徴があり、衣類に木綿が使われるようになってからも、穀物を保存する袋や酒を漉すための袋など、実用品に広く使われてきました。
昭和になって大量生産できる化学繊維が入ってくると、手間のかかる科布は一気に廃れてしまいますが、野性味のある独特の風合いが愛され、帯のほか帽子やバッグなどのファッション小物の素材として生き続けてきました。

かつては日本の各地で織られていましたが、現在でも生産を続けているのは、主に山形県と新潟県の一部地域です。
この地域の科布は「羽越しな布」(うえつしなふ)という名前で日本の伝統工芸品として指定を受けており、生産者の団体が技術継承や原材料の確保などに務めています。